【30分でわかる】木育の導入を成功させる5ステップ
2019年に木育インストラクター取得、2021年にひょうご木製品マイスターに認定されました、株式会社松崎の松崎裕太です。この記事では、幼稚園・保育園・こども園などで木育を導入してみたい、または木育がどんなものなのか知りたい方に向けて、木育とはどんなもので、どう役立つのか分かりやすくまとめてみました。真剣に読むと30分もかからず読めると思います。が、何度も繰り返し読んでいただければ、貴園での木育が確実にうまく行くことをお約束します。さらには、僕たち株式会社松崎が、これからどんなことをしようと思っているのかも最終章にまとめようと思っています。
数年前、木育という言葉自体、世の中に知られていなかったときから現在。地元神戸市や三田市、明石、淡路島での木育導入事例、弊社の木製知育玩具の導入によって、たくさんの子どもたちの変化を感じられたのは、本当に幸運なことです。直近では、まる1年かけての木育カリキュラムによって、園だけでなく、保護者からみた園の評判が上がったことがあり、本当に嬉しい体験でした。
本記事では、園の差別化に悩んでいたり、「なにか子どもたちにとって、もっと良い体験ができるカリキュラムはないかな。」と考えている現場の先生、理事長、園長先生を思い描いて書いています。
園の差別化という課題では、いわゆるコモディティ化(同じサービスの品質になること)が進み、そもそも園も選ばれる時代に突入していることがあります。少子高齢化が進むこの時代では、選ばれることは至難の業。そして、差別化の為に木育を選ばれることは、悪くない選択だと僕は考えます。これは、より良い体験を子どもたちに届けるといった面でも、木育が効果的だと確信しているからです。
この記事を読めば、具体的な木育の導入方法や子どもたちに与える影響だけでなく、地域やご利用者の親御さんからの信頼関係にも、木育が大きく関わることが理解できます。これを実際に木育を導入された園さまの事例をもとに語ります。もちろん専門用語や難解な言葉は使わず、誰が読んでも理解可能に書いていますが、内容は極めて濃いものになっています。
この記事を通して貴園に少しでも良い変化が生まれることを願っています。
それでは、はじめましょう!
もくじ
親が感動した「木育」の効果。
そもそも木育ってなんでしょうか。ということで、ウィキペディアからの引用をご覧ください。
“「木を子どもの頃から身近に使っていくことを通じて、人と、森や木との関わりを主体的に考えられる豊かな心を育てたいという想いを「木育(もくいく)」という言葉にこめた」記され、「子どもをはじめとするすべての人びとが、木とふれあい、木に学び、木と生きる」こと学ぶ活動を木育とした。”
充分わかりやすく世の中に提言されていますね。森や木との関わりを主体的に考えられることは、将来的に地球全体の環境を考えることにもなりますし、日本の資源のことにも「自分ごと」になれるでしょう。
しかし木に興味がない方はこう考えたでしょう。「木のことなんか学んでどうなるの?」と。
結論から申します。
木育を学ぶと、子どもたちのモノの扱い方が大きく変わります。
具体的には、モノを丁寧に扱ったり、モノの手入れを自主的にするようになります。
木育では、最終的に「自分の使う道具を自分でつくる」遊びをします。数ヵ園の木育カリキュラムを通して僕が実感したこと。それは実際に自分の手でつくるからこそ、本心として「モノを大切にしよう」と子どもが大人に言われずとも思えることが、木育の一番の役割だということです。
木育は、座学ではないことがひとつ、大きな特徴です。木の玩具で遊ぶことからはじまり、木に触れ、自然そのものに触れ、自然のものを使って自分の道具を自分でつくる大きな流れの中で、大切だと本音で思える心を育てる教育、と僕は位置づけています。
SDGsが話題ですね。そうした問題を座学として学ぶことはできますが、自分ごとには、なかなかできません。例えば「木って大事ですよね?」とあなたが誰かに問われたとします。あなたはきっと「そうですね。大事ですね。」と答えると思いますが、そこにはどこか他人事の気持ちがあるのではないでしょうか。
木育は万能ではありません。しかし、将来必ず起こりうる環境と人との問題を解決する土台になると僕は確信しています。目も見えない、耳も聞こえないヘレン・ケラーが現ハーバード大学に入学できたのも、世界各地を歴訪し、障害者の教育・福祉の発展に尽くすことができたのも、実感する教育を受けてきたからだと、本人も言っています。わかりやすい例があります。耳も聞こえない、目も見えないヘレン・ケラーに「生まれる」という単語を教えるために、彼女の先生は、今まさに卵からひな鳥が孵る瞬間、ヘレン・ケラーの手を卵に触れさせる。そんな教育方法を繰り返してきたことです。木育は、この教育方法に近いものだと僕は考えます。
木育を通してモノを大切にする心が生まれた子どもたちは、家での生活態度も変わります。実際、園には「自分の子どもが自分のお箸の手入れをしはじめてビックリした。」といった声も届いています。
五感を刺激する無垢の木というチカラ。0~1歳児編
さて、では年齢ごとに木育をどう導入していくか、ご説明しましょう。
まずは0~1歳児編。
この月齢では、まだ道具を作らせたり、遊ばせたりはしません。まず大切なのは五感。本物の木や葉っぱ、土を触ったり、匂ったりすることです。
普段、家の中では触る素材は限られていると思います。だからこそ、触ったことのないものを触らせる。そして匂いを感じさせる。乳児・幼児教育に詳しいプロの方であれば既にご存知のことだと思いますが、0~1歳児にかけて、五感を刺激することは脳の発育に大きな影響を与えます。もちろん、いろんな種類の手触り・音・匂いに触れる方が発育に良いとされています。
木育のカリキュラムでは、近くの公園に向かい、落ちている葉っぱや枝をみつける遊び。室内で無垢の木のつみきを触らせてカチカチ音を鳴らすあそび、大人が積み上げて子どもが崩すあそびをします。とにかくこの月齢は五感を刺激することに注力します。
まずは二次元の遊びが大切。2歳児編
2歳児からは、二次元遊びを展開します。
「二次元遊びってなに?」
そう思われた方へ。
二次元遊びとは、平面で遊びを展開することです。もっと具体的にいうと、木の板などをひたすらに床に広げる遊びのことを指します。
一見して意味のない遊びに思えますが、次の立体遊びの前ステップとして、とても重要なことなのです。
というのも、二次元遊びをしてこなかった子どもに積木を渡すと、ただひたすらに横に広げてしまう。ということがあるからです。まずは、二次元的に床に広げる遊びを経験することで、子どもの体は「次は立体にしよう!」となる訳です。
外遊びは、0~1歳児と同じように公園で素材を触ったり嗅いだりする遊び。室内では同じサイズの色付きベニヤ板などをつかって、「床に広げるあそび」「床に広げた状態での色あそび」「床に広げて道路をつくる遊び」等がオススメです。特に色あそびは盛り上がる上に学びに直結するのでオススメのカリキュラムです。
やり方は下記です。
- 色付きのベニヤ板を子どもたちに床に広げさせる
- 先生が「この色の上にのろう!」と言いながら指定の色を子どもたちに見せる
- 子どもたちが色付きのベニヤ板に乗っている状態で「この色は、〇〇といいます!」と色の名前を子どもたちに教える
この遊びの良いところは言葉としての色が分かっていなくても遊べるところです。平面に広げる遊びと、色の概念を理解できる一石二鳥の遊びですね。
「あれ?なんだか、木育から遠ざかってない?」ここまで読んでいただいたあなたは、そう思われましたね?
実は、遠ざかってないのです。
その理由は、5歳児編のときにご説明しましょう。ひとまず、次のステップ3歳児です。
『立体』との出会い。3歳児編
3歳児になると、ひたすら平面に広げる遊びから3次元の遊びへと進化します。
ここになって、はじめて「積む」という遊びが楽しくなってくるのです。
具体的には、積木による
- 見立てあそび→動物や建物に見立てるあそび
- 高さを競い合うあそび→積木などでチームに分かれて高さを競い合うあそび
- バランスゲーム→交互に積み上げて崩さないようにするあそび
- 数当てゲーム→基尺(基本の寸法)が同じ積木を用意して、数を揃えるあそび
木育カリキュラムでは、0~2歳児と同じように公園で素材を触ったり嗅いだりする遊び。室内では積木や組木をつかって、チームに分けて高さを競い合うゲームや見立てあそび等を展開します。
3歳児のステップで一番大切なことは、いかにして積木自体を楽しませるか、です。
4・5歳児から本格的に始まる木育に向けて「木に関わるものって、楽しいんだ」と子どもたちが自発的に思える環境が有るのと無いのとでは、次のステップから始まる「ものづくり」において大きな影響あります。
ただ、積木というものは置いてあるだけでは中々子どもたちは遊んでくれません。
なので、大人から声をかけて、あえてゲーム形式で競い合わせたりするのが大切です。
ゲームに見立てて遊ばせることにより、「次はこうやって遊んでみよう」と子どもたちが自発的に思えるようになるのです。
これで、木育の下準備が整えられます。
それでは木育の本番、自分でものづくりをする4歳児からのステップをご説明しましょう。
ここから本番!自分で木製品をつくる。4歳児編
4歳児になると、言葉の理解も深まるので自分の道具を自分で作ることができるようになります。
木育の真髄である「ものづくり体験」が始まるのが4歳児です。
※こちらの章はとても長いです。
4歳児のステップでは、年間を通して具体的な木育カリキュラムを設定します。
おおまかには、この2つの道具を使えるように一緒に木育を楽しみます。
- 紙やすりが使えるようになる→質感や形状の変化を楽しむ
- 塗料を塗れるようになる→木目、色、匂いの変化を楽しむ
オススメのカリキュラムの進行は下記です。※11月~3月は寒いので屋内での木育活動推奨
- 木のお守り
→木の端材を紙やすりで削って世界に一つだけのお守り(アクセサリー)をつくる。 - 木のおにぎり
→おままごと等に応用できる三角形の木片を紙やすりで削って綺麗に整える。 - ヒノキのお箸
→紙やすりで木を削って形を整え、オイルで仕上げる。仕上げるときに、子どもたち自身でメンテナンスできる方法まで伝える。
4歳児では、ここまでつくることができます。
一番のねらいは「普段の生活に道具を使うことを当たり前の行動にすること」です。
ちょっとわかりにくいですよね。スミマセン。
もう少しくだいて言うと、普段の園の遊びの中で本物の道具を使った遊びを、子どもたちが自発的に行うことです。
例えば、園庭に木の端材と上記の道具(紙やすり・塗料)を置いておいて、園庭遊びのときに、子どもたちが自然と作品や道具を自作してくれることです。「いやいやそんなの出来ないでしょ」これが、できるんです。
例えばおままごとセットがあれば、その中に使う食材を自分たちで形を整えたり、色を塗ったりします。
この時点で、創造性や発想力、そして行動力に大きな変化が現れます。
「大人に言われて行動する」ことから「自分で考えてつくってみる」というアクションに変わるのです。
これもひとえに、道具が使えるかどうかが子どもたち本人にとっても行動するための土台に直結しています。
道具の用途が明確だと、「この道具をあの材料に使えば、こんなことが出来るんじゃないか」と、子どもたちは想像できます。そして木育カリキュラムである程度の成功体験(自分の力で道具を完成させたこと)があるので「できる!」と子どもたちは自分自身を鼓舞できるようになるのです。
上記のカリキュラム進行に加えて、屋内での遊びも取り入れます。
3歳の時点である程度の積木あそびをしているので、4歳ではもう少し難易度の高い「組木あそび」を推奨しています。
例えば、弊社の製品である「きみたつクミキ」を使ったあそびでは
- 高さ競いゲーム
- バランスゲーム
上記2点をオススメしております。
3歳時点の積木でも高さ競いゲームはできるのですが、積木と組木はまったく別物です。積み上げることで高さを稼ぐ積木ですが、組木の場合は、組むことで高さを稼ぐことができます。この組む作業で、子どもたちは苦戦を強いられるわけですが、それが良いところなのです。思い通りに行かないからこそ、考えることの重要性が増します。積むだけでは単にバランスの重心を考えた遊びになりますが、組むことになると重心のバランスだけでなく、どこに組めばどんな動きになるか考える必要があるからです。
おおまかな4歳児の木育のねらいやカリキュラムをご説明させていただいたところで、もう一つ。
進行にあたっての、ちょっとしたコツがあります。
それは遊びやものづくりの中で、木に関することについて声掛けすることです。
例えば、木のお守りをつくるとき、紙やすりで磨かれたものと素地のものを用意します。
それを「磨いたら、こんな触り心地になるよ」と声をかけながら子どもたちに渡します。
木という素材本来の触り心地を体感すると共に、紙やすりで削られたさらさら感が体験でき、木の素材の無加工の触り心地、加工された触り心地、両方を比較して体験することができます。
また、子どもたちの手元に端材が渡ったときに「近くのお友達の木をみてみよう。よく見ると木目が全部違うね」「模様が違うのは、みんなの顔が違うことと一緒だよ」と声をかけることで、木が生き物であることを実感してもらいます。
これら声掛けの目的は、ものを大事にする心を育てることです。
子どもがものを雑に扱っているときに「そんなことしたら、痛い痛い言ってるよ」と声をかけることがあると思います。しかし、当の子どもは、それがなぜダメなのかしっくり来ません。それが、たとえば木が生き物であることを実感することで「生きてるものを投げちゃダメだな」と納得できるようになるのです。
あそび、創造性の開花。5歳児編
5歳児になると、更に難易度の高いものづくりカリキュラムで、ものを組み立てたり創り出す作業をできるようにします。
具体的には、下記の道具を使えうように木育カリキュラムを設定します。
- のこぎりが使えるようになる→形を切り出して創る楽しさを知る
- ハンマーが使えるようになる→組み立てる楽しさを知る
- ビス留めができるようになる→本物の製品をつくる楽しさを知る
オススメのカリキュラムは下記です。※4歳児と同じく11月~3月は寒いので屋内での木育活動推奨
- つみきづくり
→初めてのノコギリ作業。溝をつけてまずは切ることに慣れる。 - すのこづくり
→つみきづくりを2回ほど通してノコギリに慣れてから始める。切る・削る・磨く・塗る・組み立てるという全ての工程を5回程度に分けて製作。卒園のプレゼントにもピッタリ
4歳児の木育カリキュラムを経ていれば、製品レベルのものだって作れます。4歳児と一番違う点は「創造性の向上」です。
切り出して自分で形をつくる作業は、同時に見た目を自分で決める必要性が出てきます。これは、デザインをする能力に直結する大切な工程です。
更に5歳児では、自分で切り出したものを組み立てる工程も組み込んでいます。全体のデザインを自分の頭で思い浮かべながら、それぞれの素材をつくり、それを組み合わせてイメージ通りにつくりあげていくのは、大人でも難しいことです。しかし、しっかりと木育のカリキュラムの工程を踏んでいれば、5歳児でもちゃんとした木製品だってつくることができます。
ここで重要になるのが、0~3歳児でつちかってきた「積木遊び」です。積み上げること、どうやったら崩れるか知っていること、その経験が”ものつくる”ということにおいて、とても重要なことなのです。ものづくりにおける考え方の下地のようなものですね。
5歳児は「創造性の開花」と僕は呼んでいます。今までやってきたことを、卒園までに作品として表現できるのが5歳児です。
まとめ
結論として、木育で子どもたちの何が変わるのか。それは
- モノを大切にしようとする心
- 自分からモノを生み出そうとする自発性
この2点です。
そしてそれぞれの年齢で大切なことは
- 0〜3歳までは、木の玩具や屋外にある葉や枝と触れ合うこと
- 4歳は、木を加工すること
- 5歳は、木で製品をつくること
この3つがポイントとなります。
僕たちの“野望”
僕たち株式会社松崎は、密かな野望を描いています。
それは、木育を通して学んできた子どものうち誰かが、GAFA(Google,Apple,Facebook,Amazon)を超えるような企業を生み出すことです。
木育というと、ただ木に触れ合うことや大工仕事をかじってみるというイメージが皆さんの中ではあるかもしれません。しかしその本質は全くの別物なのです。
あくまで僕たちがしている木育というものは、子どもたちの非認知能力(自分から自発的に学ぼうとする力や自分自身を愛することができる力)を育てることを目的としています。
座学は、あとからいくらでもできます。だからこそ0〜6歳という、人格の形成において一番大事な時期に“本物”を触って学ぶ木育が大切だと僕たちは考えています。
非認知能力の高い人間は、どんな苦しい状況になっても粘り強く立ち上がり、何度も挑戦できる心を持っています。
“失敗しないように”教育されてきた僕たちの世代とは全く違う“挑戦することが当たり前”なカッコイイ大人になってほしい。そう思いながら木育のカリキュラムを組んでいるのです。
ここまで読んでいただいて、本当にありがとうございます!
木育にご興味がある方は、ぜひお問い合わせくださいね。
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